アグネス・チャンのエッセイ
なぜやってはいけないのかを理解させることが第一歩
「子どもが謝ってくれない。どうすればいいの?」と若いお父さんから聞かれました。子どもが悪いことをした時に、一番大事なのは、謝ってくれるかどうかではなく、なぜいけないのかを子どもが理解することです。謝っても「なぜ悪いのか」を理解していないと、子どもは繰り返しいけないことをしてしまいます。だから「謝りなさい!」というより、むしろ「これはなぜやってはいけないの?パパに説明して」と聞くことのほうが大事です。
「なぜいけないの?」多様な視点から一緒に考える
例えば、子どもがコップを割りました。「これはなぜいけないの?」と聞いてみてください。もし子どもが理由を言えなかったら、例えば、「パパが怒るから?」「良いコップだから?」「怪我するかもしれないので、危ないから?」「気をつけなかったから?」などと選択肢を挙げ、子どもに選んでもらってください。そうすれば子どもは答えを考える時に、自分の行動をいろんな側面から考えるようになります。
もし子どもが「パパが怒るから」と答えたら、これはちょっと問題です。パパが怒らなくてもやってはいけないことなのです。親の顔色をうかがって行動する癖は決して良いことではありません。親が見ていないならやっても良いと思ってしまうからです。
「良いコップだから」と答えたら、子どもは、親は自分より物が大事と考えていると勘違いしているかもしれないので、「それもそうだけど、それはパパが怒る理由ではない。コップより大事な物がある」と答えましょう。「気をつけなかったから」と子どもが答えたら、「そうだよ。物事を進める時には気をつけないといけない。でもそれはパパが怒る理由ではない」と答えます。
残る選択肢は「危ないから」です。これが正しい答えです。
「危ないから」――根本的な理由を伝えることが本当の教育
このように、子どもに時間をかけて理由を教えてあげてください。「パパは君が怪我するのを心配しているんだよ。自分を大事にしてほしい。そのために気をつけてほしいんだ」と、一番根本的な怒る理由を説明してあげてください。
親として、子どもの安否より大事なことはないのだということを子どもにもわかってもらうのが、子どもと良い関係を築くコツです。だから、「謝ってもらう」のではなく、説得して、行動を変えさせることが大事です。すぐに「謝りなさい」と要求するのではなく、再びやらない気持ちにさせることこそが教育です。
アグネス・チャン
香港生まれ。歌手・エッセイスト・教育学博士。94年よりECC
教育スーパーバイザー。香港バプテスト大学教授(客員)、ユニセフ・アジア親善大使。現在、歌手、タレント活動だけでなく、講演、エッセイ、文化活動など多方面で活躍中。