THE CAT AND THE RAT AND THE HAT
文・高橋美由紀(愛知教育大学名誉教授)

ネオンカラーのイラストとテンポのよい言葉遊びが印象的な一冊です。
声に出して読みたくなる、にぎやかな言葉遊び
『THE CAT AND THE RAT AND THE HAT』は、表紙に描かれた cat(ネコ)、rat(ネズミ)、そしてピンクの hat(帽子)から、楽しくて、どこか騒がしい物語が始まる予感が伝わってくる英語絵本です。
お気に入りのマットの上で、遊んだり、眠ったり、夢を見たりしながら、のんびり過ごしていた cat の前に、素敵な帽子をかぶった rat が現れます。その瞬間、cat の心に芽生えるのは、ただ一つ「I WANT THAT HAT!(その帽子がほしい!)」という強い気持ちです。
帽子をめぐる cat と rat の奪い合いは、誇張された動きとテンポのよい展開で描かれ、まるでスラップスティック・コメディのよう。見ているだけで思わず笑ってしまう、視覚的な楽しさにあふれています。さらに物語が進むと、bat(コウモリ)が登場し、より魅力的な cravat(スカーフ)を身につけていることで、物語は一気に大混乱へと向かいます。
「-at」の音が耳に残る、ライムの楽しさ
cat、rat、hat、bat、cravat といった「-at」韻を軸に進むストーリーは、自然と耳に残り、思わず声に出して読みたくなる心地よさがあります。この絵本は、英語におけるライム(rhyming)の感覚を育てる教材としても非常に有効です。
子どもが、cat / rat / bat / hat / mat など、同じ音のまとまりに気づくことで、「音が同じだと楽しい」という感覚が芽生えます。これは、読み書き以前の段階で重要とされる音韻意識の基礎を、無理なく自然に養うことにつながります。
韻を踏んだ言葉遊びとリズミカルな文章は、大人も子どもも一緒に楽しめる本書の大きな魅力です。「ほしい」という単純な感情が次々と連鎖し、思いがけない展開へとエスカレートしていく様子は、子どもにも理解しやすく、ユーモアとおかしさに満ちています。特に、「正確さ」よりも「楽しさ」を大切にしたい低・中学年において、「英語は楽しい、音がおもしろい」という前向きな態度を育てる一冊といえるでしょう。
親子で音・絵・物語を楽しむ読書体験へ
この絵本は、口に出して読んでこそ魅力が最大限に伝わります。保護者が抑揚をつけて読み聞かせることで、自然と子どもたちを惹きつけ、笑いを引き出すことができます。また、高学年の児童にとっても、音の繰り返しや強勢(stress)、リズムを意味とともに体感できる点が大きな魅力です。
さらに、二次元コードから音声(Stories Aloud)を楽しめるのも本書の特長です。親子で正確な発音モデルを聞いたり、子どもが一人で繰り返し聞いて楽しんだりと、多様な楽しみ方が可能です。保護者が、「次は何が起こるかな?」「次はどんな言葉が出てくるかな?」と声をかけながら読むことで、子どもは音・絵・物語を手がかりに想像をふくらませ、受動的ではない、考える読書体験へとつながっていきます。