AI時代を生きる子どもたちに必要な
「論理力」とは

藤田 瞳さんが出口 汪さんに聞く

これからのAI時代を生きる子どもたちに必要な力とは何か。国語・古文のカリスマ講師であり、学校現場にも取り入れられている「論理エンジン」の開発者でもある出口汪さんに、小学生・中学生のうちから身につけておきたい思考力、論理力について、フリーアナウンサーの藤田瞳さんが聞きました。

藤田瞳さんのプロフィール写真 聞き手 藤田 瞳さん
出口汪さんのプロフィール写真 話し手 出口 汪さん

考え方の質を高める

藤田さん:これからのAI時代には、知識を身につけること以上に、考え方そのものの質を高めることがとても重要になるとよく耳にします。具体的にはどんなことでしょうか。

出口さん:これからのAI時代は、知識をただ身につけるだけではなく、考え方そのものの質がとても重要になります。小学生・中学生のうちから意識したいのは、まず「問いを立てる力」です。

AIは質問に答えるのは得意ですが、「何を問うべきか」を考えるのは人間の役割です。「なぜこうなるのか」「本当にそうなのか」と疑問を持つことが必要なのです。簡単に正解を求めるよりも、次につながる問いを立てる力が求められます。

次に大切なのは、因果関係を考える力です。物事には必ず「原因」と「結果」があります。たとえば「なぜ環境問題が起きるのか」という問いがあれば、「なぜなら急速に人口が増え、廃棄物の処理が追いつかないからだ」といった原因があります。原因と結果の関係をとらえることで、「では、どうすれば解決できるのか」という次の問いを考えることができます。

考えを整理できず困っている子どもたち

また、一つの物事について複数の視点から考える「比較して考える力」も欠かせません。日本について考えるときは他国と比べ、現代社会の問題を考えるときは過去の事例と比較することで、特性が明らかになります。ある意見について、賛成するだけでなく反対の立場から考えることも必要です。AIを使う場合でも、その答えを「一つの意見」としてとらえ、ほかの考えと比較する姿勢が大切です。

さらに、多くの情報をそのまま受け取るのではなく、重要なものと不要なものに整理できる力も必要です。今、向き合っている問いに答えるには何が必要なのか。要点を箇条書きにしたり、図に表して整理したりする習慣をつけることで、頭の中を明晰にしていくことができます。

そして最後は、自分の言葉で説明する力です。AIの答えをそのまま使うのではなく、自分で理解し、自分の経験や知識と結びつけて、「AIの回答は、つまりこういうことだ」と言い換えられるようになることが重要です。

思考力・論理力が身につかないことで起こる不都合とは?

藤田さん:では、このような力が身につかないと、どんな不都合が起こるのでしょうか。

出口さん:結論からいうと、「なんとなく分かっているつもり」で行動してしまい、誤った判断をしたり、的外れな答えを出したりすることが増えます。しかも本人はそれに気づきにくいのです。

たとえば、原因と結果を取り違えてしまいます。テストの点が悪かったとき、本当は勉強方法そのものに問題があるのに、学習時間が短かったからだと考えてしまう。改善すべきポイントがずれてしまい、努力しても成果が出にくくなります。

また、情報に流されやすくなります。理由を考えずに結論だけ受け取るため、SNSの意見やAIの回答をそのまま信じてしまう。これはとても大きな問題で、結果として誤った情報に基づいて判断するリスクが高まります。

さらには、自分の考えをうまく伝えられないということも起きます。「なんとなくこう思う」と感じていても、なぜそう思うのか、どんな根拠があるのかを説明できないため、相手を納得させることができません。これは学習だけでなく、人間関係や将来の仕事にも影響します。

課題を分けて考えたり、順序立てて整理したりできないため、どこから手をつければいいか分からない、同じ失敗を繰り返すといった状態にも陥りやすくなります。そして何より問題なのは、感情に振り回されやすくなることです。論理的に整理できないと、不安や焦りで誤った判断をしたり、思い込みや一時の感情で決めつけてしまうことが増え、人間関係にも悪影響を及ぼすことがあります。

論理的思考力とは、単なる「頭の良さ」ではありません。自分の考えや行動を修正していくための土台になるものです。

論理的思考力を身につけるための効果的な学習法とは

藤田さん:論理的思考力を身につける、と一口に言われても、子どもたちには少しハードルが高そうです。

出口さん:論理的思考力は特別な才能ではなく、日々のトレーニングで伸ばすことができます。まずは「なぜなら〜だから」で説明すること。これはシンプルですが、効果の高い方法です。

たとえば「この本は面白い」で終わらせず、「なぜなら登場人物の成長と自分を重ねて読むことができたから」と理由をセットにして説明します。それだけで、因果関係をとらえる力が鍛えられます。

次に、結論、理由、具体例の順に話すことです。「私は〇〇だと思う」「なぜなら〜だからだ」「たとえば●●のような事実もある」という型を日常的に用いることで、論理力が養われます。最初は内容よりも型を守ることを優先するとよいでしょう。

さらに、2つのものを比べて考える習慣をつけます。たとえば電子書籍について考えるときには、紙の本と比べてみる。それぞれの共通点、メリット、デメリットを挙げていくことで、電子書籍の特性が分かるようになります。どちらが良いかとその理由を考えることも、論理力をつけるトレーニングになります。

間違ったときの振り返りも重要です。どの教科でも、問題を解いて間違えたときには、なぜ間違えたのか、どこで考え違いをしたのかを言葉にします。正解を見るだけでは、思ったほど学力は伸びません。問題の解き方、考え方を振り返り、それを自分の言葉で説明できるようになることが重要です。

出口汪さんの著書『国語の力』 出口汪さんの著書『論理の力』

思考力と基礎知識との関連は?

藤田さん:論理的思考力を身につけるには、その基礎として一定程度の知識も必要だと思いますが、それについてのお考えをお聞かせください。

出口さん:論理的思考は、知識なしには成り立ちません。ただし大事なのは、「量としての知識」ではなく、使える形で整理された知識です。

知識を増やすときに最も重要なのは、「なぜそうなるのか」を一緒に理解することです。歴史なら原因と結果の関係を踏まえて出来事の流れをとらえる。算数なら、なぜその解き方になるのかを理解する。丸暗記するのではなく、考えながら覚えるようにします。「説明できない知識」は、論理的思考には使えません。

また、単独で覚えるのではなく、前に学んだことや他教科で学んだこととどう関係するかを考えることも大切です。たとえば理科で電気について学ぶとき、算数や社会科ともいろいろなつながりが見つけられます。一つの知識は有機的に結びつけることで、使える知識になります。

言葉をたくさん知ることも重要です。言葉がなければ、考えること自体ができません。比較を示す言葉、範囲や程度を示す言葉、因果を示す「なぜなら」「したがって」「だから」、逆説を示す「しかし」「だが」など、論理を示す接続語を使いこなせるようにすることが大切です。そのためには、読書などを通して多くの文章に触れることも必要です。

知識を学校や学習の中だけで終わらせないことも重要です。日ごろからニュースや新聞、身の回りの現象について、「これはどういうことなのか」「なぜこのようなことが起きるのか」と考えることで、知識は現実で使えるものになります。

AIを使ってみるなら

藤田さん:ここまでいろいろとありがとうございました。最後に少し横道にそれるかもしれませんが、小学生がAIを使って学習するとしたら、どのようにすればよいでしょうか。

出口さん:学習にAIを使う場合は、「答えをもらう道具」ではなく「考えるための相手」だととらえるようにします。ここを間違えると、思考力はほとんど伸びません。逆に、使い方を工夫すれば強力な学習ツールになります。

最初に使いたいのは、「なぜ?」を深める質問です。「なぜこうなるの?」「小学生でも分かるように説明して」「理由を3つに分けて教えて」と質問します。1回で終わらせず、2回、3回と繰り返すことで理解が深まります。

自分の答えをチェックさせる使い方も効果があります。自分で答えた内容をAIに見せて、「この回答の問題点は?」「もっと分かりやすくするには?」と質問することで、「考える、修正する」を繰り返すことができます。

AIは自分の考えを深めるために使えば、効果的なツールです。しかし、すぐに答えを聞いたり、その答えをそのまま写したりしていると、どんどん自分では考えない子になってしまいます。

まず自分で考える。次にAIに質問する。そして自分の言葉で言い直す。このような使い方のルールを作るとよいでしょう。AIは「自分に代わって考えるもの」ではなく、「自分の考えを深くする相手」です。このことを頭に置いてAIを使いこなせるようにすることが、これからの時代を生き抜く子どもたちには必要です。

藤田さん:先生、どうもありがとうございました。

【聞き手:藤田】

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聞き手

藤田 瞳

ふじた ひとみ / フリーアナウンサー、教育コーディネーター。徳島市出身、京都教育大学教育学部卒業。関西のテレビ・ラジオでキャスター、リポーターとして活動。現在は一般財団法人基礎力財団で「国際標準 論理文章能力検定」の運営に携わるほか、教育コンテンツ開発やセミナー開催を支援している。キャンサーサバイバーとして、学校でのがん教育講演にも取り組む。

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話し手

出口 汪

でぐち ひろし / 関西学院大学大学院文学研究科博士課程単位修得退学。水王舎代表取締役、広島女学院大学客員教授、出口式みらい学習教室主宰、基礎力財団理事長。現代文講師として、入試問題を「論理」で読解するスタイルを確立し、論理力を養成するプログラム「論理エンジン」を開発。現在は講演、教材開発、教員指導など幅広く活動している。著書に『出口先生の頭がよくなる漢字』シリーズ、『子どもの頭がグンとよくなる!国語の力』など多数。

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