南山 遥輝(みなみやま はるき)
オーストラリア、特にシドニーといえば、世界中の文化が共存し、異文化理解が進んだ、多様性に富んだ都市というイメージを私は持っていました。一方で、オーストラリアらしい精神性や文化とは何なのだろうかという疑問も同時に抱いていました。留学生活を通して見つけることができたその答えの一つが、「受容の精神」です。それを感じたエピソードをいくつか紹介します。

ニューサウスウェールズ大学のキャンパス
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誰からもすぐに話しかけられる?
まず、日常生活で話しかけられることの多さに驚きました。私は趣味で写真を撮るのが好きですが、カメラを構えていると、「何を撮っているの?」「いい写真は撮れた?」と、ほとんど毎回のように声をかけられます。また、ランニングをしていると「どこまで走るの?」「どのくらい走るの?」と聞かれることもあり、最初は戸惑いを感じました。日本では、見知らぬ人に突然話しかけることはあまり一般的ではなく、むしろ距離を保つことが礼儀とされる場面が多いためです。
しかし次第に、それらのやり取りは、単なる好奇心によるものではなく、相手を一個の人間として自然に受け入れ、関心を示す行為なのだと感じるようになりました。明らかに外国人である私に対しても、出身や外見を過度に意識することなく、同じ場にいる一人の人間として当たり前のように接してくれる姿勢に、強い受容の精神を感じたのです。
写真を撮っていると、自然に会話が始まることが多くありました
ディスカッションはあまり得意ではなかったけれど
また、大学の授業ではディスカッションや講師との対話が積極的に取り入れられていましたが、ここでも文化の違いを感じました。ディスカッションでは、講師がクラスの全員に一人ずつ意見を聞いていくことも多く、当初私は、何か複雑なことを答えなければならないと身構えていました。しかし、クラスの仲間がかなりシンプルな答えや少し的外れな回答をしても、講師が肯定的なリアクションをするのを見て非常に安心したことを覚えています。この雰囲気のおかげで、普段はあまり積極的にディスカッションに参加するタイプではない私も、議論にしっかりと参加できるようになっていきました。
アルバイト先でも
現地のレストランでアルバイトをしていた際にも、「受容」の文化を強く感じる場面をいくつも経験しました。例えば料理を提供する際、多くの客は「Thanks, mate」や「Cheers, mate」と自然に声をかけてくれます。初めはこれを単なる挨拶だと思っていましたが、そのうちに、この「mate」という言葉の持つ意味の大きさに気づきました。それは年齢や立場、国籍に関係なく、相手を対等な存在として扱おうという姿勢の表れではないかということでした。客は「mate」という言葉を使うことで、店員に対して、客と店員という関係を超え、同じ空間を共有する一人の人間として接してくれている。この感覚は、オーストラリア社会に根付く受容の精神を、最も強く感じさせてくれるものでした。
オーストラリア人は陽気でフレンドリーだとよく言われます。その根底にあるのは、文化的背景や価値観の違いを前提とした上で、相手を積極的に受け入れようとする文化、そして精神性だと思います。留学生活を通して感じたこの「受容」の姿勢は、文化や価値観が異なる他者と共に生きるための一つの理想的な在り方を示していて、今後、自分が多様な人々と関わっていく上で大切にしていきたい価値観になっています。

日々の暮らしの中で見つけた、オーストラリアらしい風景の一つ
私の英語学習法
私が現地でこうした「受容」の精神を肌で感じ、積極的に議論に参加できたのは、留学に至るまでの長い年月、英語というツールを磨き続けてきたからだと強く実感しています。
私は幼稚園の年中から小学校3年まで、祖母が個人で経営していた英語塾に通っていました。中学校へ進学してからは進学塾に通い始めましたが、英語に力を入れた塾ではなかったため、英検®2級を取得して中学校卒業を迎えました。高校に進学してからは、大学では在学しているうちに交換留学することを念頭に置き、集中的に英語学習に取り組みました。
この中で、最も役立ったと感じているのが単語帳。それを有効に使って、単語力をつけたことが全体的な英語力の底上げにつながったと感じています。
私が効果的に単語を覚えるために実践したのは、次の二つの方法です。
一つは、単語帳を見る際に発音をしっかり覚えること。新しい単語を覚えるときは小声で発音するのを習慣付け、定着してきたら頭の中で発音するようにしていました。こうすることで、英語を聞き取る際に、やや難しい単語が出てきても理解しやすくなりました。
二つ目は、単語帳で覚えた単語が実際に使われている場面を、海外のインターネットのニュースや雑誌、ポッドキャストなどで探し、日頃あまり見かけない単語に、実際の文脈の中で触れることで定着を図ったことです。
こうした高校時代の努力が実り、大学1年の6月時点で、留学先で求められていたIELTS6.5を取得することができました。しかし、会話力や授業における実践的な英語運用能力にはまだまだ不安を感じていたため、留学直前は、授業・課題・テストのすべてが英語で行われる、『E2科目』と呼ばれる講義※を履修し、不安の解消に努めました。
※E2科目の参考: https://foreignlang.ecc.co.jp/learn/l00030/
留学生活を実りあるものにするためには、現地に行くだけでは不十分。英語というツールを事前にどれだけ使いこなせるようになっておくかが大きく影響すると感じました。英語力を前提に授業で自主的に発言したり、人との何気ない会話にも積極的に関わったりしたからこそ、オーストラリアの「受容」の文化に目を向けることができたのだと思っています。

多様な文化が共存するシドニーの街並み
南山 遥輝(みなみやま はるき)
京都大学農学部3回生。2025年9月から2026年2月まで、オーストラリアのニューサウスウェールズ大学(UNSW)へ交換留学。